「ぼく」が仲良くなったヘンテコな生き物は、どこにも帰る場所のない「迷子」だった......。オーストラリアの絵本作家ショーン・タンの描くちょっと不思議な世界を、オリジナルの音楽と共に人形劇でご案内します。
「ロスト・シング」(ショーン・タン作、岸本佐知子訳、河出書房新社)を原作として、2018年度新人公演作品として制作。いいだ人形劇フェスタ参加作品。
丈30cmほどの人形を、テーブルのような舞台の上で操る作品です。時には人形を操る遣い手自身も登場人物となり、自在に人形とやりとりします。
「ロスト・シング」
ショーン・タン作、岸本佐知子訳
河出書房新社、2012年
原作者のショーン・タンは、オーストラリアの作家。大人向けの絵本を多く手掛け、日本でも「アライバル」「レッドツリー」などの作品が出版されている。父がマレーシアからの移民であったことが、作品に現れるモチーフにも強く影響している。
「ロスト・シング」(原題 “The Lost Thing”)は、作者の本格的なデビュー作として2000年に刊行。作者自身が指揮し、10年の歳月をかけて完成させたアニメーション映画版は、アカデミー賞短編アニメ賞を受賞した。
Astere(アステレ)
劇伴作曲家。19才。筑波大学情報学群情報メディア創成学類所属。演奏者として幼少期から磨いてきた感性を武器に、2015年から作編曲を始める。作品の中に感じられる空気を大切にし、音楽でその世界を色付ける。
本作品のオリジナル・サウンドトラックが、SoundCloudでご視聴いただけます。
いつもは自転車で通る道を歩いてたどると、新しい発見がありますよね。そんなのやったことない?道のヘンテコな模様に目が行ったりとか、普段知らなかった脇道を見つけたりとか。ハンドルを握って前を向いているだけでは見つからない景色に出会えます。
小さい頃は自分の足で走り回って遊んでいた道をやがて自転車で急ぐようになり、いつかは自動車でただ通り過ぎるようになる。こどもの世界から大人の社会に移るにつれ、移動の効率と引き換えに、身のまわりの細やかな物事には気づきにくくなったと感じるようになりました。
原作者のショーン・タンは、画一化・効率化された社会で失われたり見逃したりされがちな物事へ向ける視点が素敵な作家です。彼がいきいきと描く世界が、いつかまた私達にも見えるようになるといいな、と思っています。
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本作品は作曲家のAstere、操演指導の人形劇団むすび座のみなさまを始めとするたくさんの方々のおかげで、2018年に6公演・2019年に再演で2公演の上演を重ね、多くの皆様からご好評をいただきました。作品を支えてくださったみなさまの温かい眼差しに、改めて感謝申し上げます。
(宴)